極東アジアのさまざまな二国間関係
本屋さんで『台湾論と日本論』という本を見つけた。親日家で台湾ナショナリストの筆者の見方・考え方に触れていくつか参考になった。南北朝鮮問題、台湾福建両岸問題、反日・謙中、反日・反韓流などの極東アジア地区のさまざまな二国間関係について読書を通じて深く、別の観点から考えさせられとても参考になった。
ヨーロッパでは100年前には国境間対立や侵略殺戮を繰り返したが、悲惨な第二次世界大戦後には地域平和の構築や経済復興活性化の為に地域共同体の発想が生まれ前向きに成長し、EU(ヨーロッパ・ユニオン)は今や27カ国から成り立ち、共通通貨の使用や関税撤廃・国境撤廃などをこの60年、とくに東西冷戦対立が終焉してからのこの20年で大きく国家というものが変わった。
一方、ヨーロッパ地区での東西冷戦対立が終焉し地域軍縮に向けて動き始めると、逆に経済的にも力をつけた極東アジアにおいては、米国の言動も絡みながら国家間の国境対立も深まっているように考える。
これらの関係の一般国民意識や政治家の意識などについて、この本を読んで考える参考になった。なお、この本は2001年3月に出版された。いわば意識する中華人民共和国がまだ2008年現在でのポジショニングを得はじめるスタートラインにたち始めた頃に書かれたものと捕らえて読んだ。
この本の筆者、謝雅梅さんは1987年、独裁政権の戒厳令下で自由のなかった台湾から戒厳令解除後にすぐに日本に移住してきた方で、世代としては徹底的な反日教育を受けてきたという方のようである。
この本の中で印象に残った部分や自分として新たに知った部分として、
・1987年までと、1987年後の李政権では大きく台湾が変わった。李登輝さんは親日家であり、日本の占領時代に幼少時の教育を受け、台湾の近代化や産業革命は日本によってもたらされた部分もあり決して歴史上で悪いだけではなかったという客観的な長所短所の事実を初等教育の歴史に織り込んだ。またそれまでは扱わなかった台湾古来の歴史について歴史教科書に折込み自国の文化に対する郷土愛やナショナリズムを初等教育に織り込んだ。
・それまでの教育は両岸問題で中国本土に対する敵対心から愛国心を煽るものがあったのを、まったく別の独自文化やさまざまな歴史を経て今があるという自我(アイデンティティ)に変えていく国民教育政策をとった。その上で徴兵制は続けた。
・そのほかにも李政権は革新的な変革を行い、日本のマスコミ等から「静かな革命」と呼ばれるところとなった。
・1949年から1988年の蒋介石家の独裁政権(蒋介石+長男の蒋経国)の時代を、一部の台湾人は現在では「白色恐怖(テロ)」と呼んでひどく毛嫌っているとのこと。蒋経国の死去後の1988年に副総統であった李登輝さんが政権を担い「静かな革命」を進め、経済的にもNIES諸国と呼ばれ近代化と民主化により大きく世界的に飛躍をした。
・2000年6月の金大中と金正日の南北朝鮮の初会談に、韓国人の多くが交流の再開を喜んだが、台湾人が中国と一緒になるかと聞かれれば、多くの台湾人は「・・・・・・」とはっきりしない答えを出すであろうとのこと。それは「有交流、没有架構(民間の交流は既にある。政治の対話がないだけ)」という感覚が南北朝鮮の初会談とは大きく違うとのことらしい。また多くの台湾人は文化大革命やそれ以前の商人等の富裕層へのむごい仕打ちを考えると中国人はすでに台湾にとって欠く事のできない貿易相手となっているが、中国共産党の政権には毛嫌いがあるようであると感じた。
・両岸問題は、南北朝鮮問題や東西ドイツと違い、他国の干渉や侵略によって分断されたものではない。あくまで中国国民党と中国共産党の対立から起きたもので、国民が保守派層と非保守派層で別れた歴史があるともいえる。
・しかし台湾人のアンニュイな意識と違い、中国本土の人たちは台湾にすごく親近感を持っていて、2000年の段階での調査統計で2500万人もの人が台湾観光をしたがっているということであった。筆者は喜びよりも「2300万人の人口のところに中国人がそんなに来たら・・・」という恐怖の感情を抱いているようである。また上海等の街では「・・・の・・・」と"的”という漢字を使わずに日本語の”の”を使った看板や商品が多いが、筆者によればそれは親日をあらわしているのでなく、親日(日本の文化大好き)の台湾若者トレンドを真似しているものだと言う。(私は上海旅行をして、「親日家が多い!」と喜んでしまったが、店構え等を考えると台湾人の筆者の方が正しい分析だと思っている)
・対中国投資額は、日本や欧米からも多いが、台湾からの投資はこれらと競い合っているほど巨額である。2000年には5000万米ドルに制限されていた投資額の制限も撤廃、台湾のマーケットは2300万人の小さなものであり、「静かな革命」で大きく成長した企業群は、ヨーロッパの企業同様に国境を越えてビジネス展開を拡大したがり、中国に向けて国内空洞化の帰来もみせているとのこと。
・儒教は女性蔑視の文化であり、夫婦別姓の韓国では「子どもには父方の姓を名乗らせるが、妻には名乗らせない」という考え方にのっとっているという。しかし欧米ではまったく逆で男女平等を実現する為に夫婦別姓を名乗る文化も近年で生まれているので、中国では欧米の考え方で夫婦別姓を名乗っていると考える家族が多いとのこと。
上記がこの本を読書して印象に残った感想である。多くは「台湾と日本の関係」「台湾と中国の関係」を中心に台湾を愛する台湾人の社会的視点から歴史的・世代別的・国際ビジネスマン的・政治対立的な観点の総合から、「民間人からみて全く離れているわけではない。しかし論理的に好きか嫌いかと言われれば歴史教科書や周りの人の世論から論理的に好き嫌いや反駁を言う必要があるもの」というところになるのではないかと感じた。これは南北朝鮮の間でもそうであるし、日中や日韓でも同様であると思う。日本帝国の侵略・支配時代において学校に通えるようになり、文字を覚え学校の先生に優しくされという事に今でも感謝しているお年寄りは多く、水道設備や道路が未整備だったのを日本が街を変えてくれたと感謝するお年寄りも日本人に差別迫害ときには暴行を受けたお年寄りと比べても少なくはないようである。こうした親日家はお年寄りに多く、日本文化好きの若者の親日家と大きく違う。
これは極東アジア特有のことでなく、ヨーロッパでも同じなのだと思う。政治家の対立が結果的に国境を境とした国家対立となるが、実際は丹頂鶴などの渡り鳥と同様に国境線などなく交易交流があり人に優しくもされ、隣がきれいに見えて憧れとなる。人間の心理と言うのは仲良くできるものなら仲良くしたいというものであれば、やはりそこには国境などどうでもよくて、便利で楽しければいい、不安は嫌だ、という単純なものになるのではないだろうか。
本の内容とは大きく脱線してかけ離れているが、いろんなことを日本大好きで戒厳令の台湾から逃れてきた台湾人の愛国者の本から考えさせられた。国ってなに?他国への対立意識ってなに?対立しないでもいいんじゃないの?国境だってヨーロッパ同様に取り外してしまったらどうなの? ・・・・・・
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